【人間の社会で飼い主さんたちと幸せに暮らすために…】トイプードル・ティーカッププードルのブリーダー【ポッシュ】
【社会化トレーニングを始めよう】
※本書で紹介する社会化期のトレーニングのご褒美フードには、おもにドライフードを使います。
[トレーニングを始める前に…]
[ハンド・フィーディングで愛犬をほめてみよう]
社会化トレーニングを成功させるコツは、飼い主さんがしてほしいことを愛犬がしたときに、飼い主さんの手から直接ご褒美フードをあげてほめること。サッと取り出せるよう、フードポーチなどに入れて身につけておくと便利です。
<①食事も兼ねるときは、1日分のフードをポーチへ>
愛犬の1日分のフードをポーチなどに入れ、社会化トレーニング(1日4~6回の食事時間)の中で、すべて食べ切るようにします。
<②フードの出どころを犬に知られないように>
右手で取り出しやすいよう右腰にポーチをつけます。このとき、ポーチが最大から見えないことが大事。腰の後ろに隠れるように調整して。
<③「声かけ」「フード」「なでる」の3点セットでほめて>
まずはほめる練習なので、犬が特別何かをしなくても「イイコ」と声をかけ、フードを1粒あげたら、前胸あたりをなでてあげましょう。
[社会的刺激に慣らす①]
[いろいろな音になじませよう]
犬が最初に出合う社会的刺激の1つが音。飼い始めて1週間が経った頃から、扉の開閉の音、チャイムの音、犬の鳴き声、車の音、踏み切りの音、雷の音など、まもなく聞くことになるであろう音になじませていきましょう。
<慣れさせたい音の入ったCDや録音した音を小さめの音量から流して>
犬に聞かせたい効果音の入ったCDや、実際の音を録音したレコーダーなどを利用します。フードの入ったコングなどで遊んでいる間に、さりげなくその音を流します。中程度の音量で始め、吠えるなどの反応を示したら下げて。日々繰り返すうちに音を気にせず遊べるようになったら、徐々に実時の音のレベルまで音量を上げていきます。
[STEP UP]
<チャイムの音などは、実際に聞こえる方角も考慮>
実際には玄関やベランダ方向から聞こえる音の場合には、CDプレーヤーなどの音源の置き場所を変え、より本物の音に近づけて慣らしましょう。
[社会的刺激に慣らす②]
[触られても平気にさせよう]
愛犬が、体のどこでも触らせてくれるようになったら、それは飼い主さんのことを信頼している証です。子犬のうちから触れられることに慣れさせれば、その分、信頼関係も早く築けるはず!
<触り始めは、犬が気持ちのいい場所から。「の」の字を描くマッサージに愛犬はうっとり>
犬にとって、触られて気持ちがいい場所は、自分の口が届きにくい場所です。愛犬を膝の上にのせたら、落ちないように首輪に親指をかけ、残りの指で前胸やお腹などを触ってあげましょう。手先を軽く曲げ、指先で「の」の字を描くように動かすのが、とっておきのマッサージ法。触られておとなしくしていられたら、ご褒美フードをあげましょう。
<嫌がるときはコングを活用しても!>
嫌がって噛みつこうとしたり、手にじゃれつくときには、コングを与えても。中のフードに夢中になっている間に首の後ろあたりを触ります。
[社会的刺激に慣らす③]
[人を怖がらないようにさせよう]
人間社会の中で暮らす飼い犬は、家族以外の人と接する機会も多々あります。そのため、人嫌いに育ってしまうと、ストレスの多い不幸な毎日に。子犬のときから積極的に人と触れ合う機会をつくり、人に親しみを覚えさせるようにしましょう。
<年齢、性別、装いもマチマチな多くの人たちからフードをもらって>
玄関先に犬嫌いでない来客が来たら、野犬を抱きかかえ、いっしょにお出迎えしましょう。玄関脇の棚の上には、つねに犬用のフードを準備しておき、来客から愛大にあげてもらうようにします。もちろん来客以外の人でも、お願いできる人なら誰でもOK。いろんな人の手からフードをもらい、人に近づくことから慣らしていきます。
[社会的刺激に慣らす④]
[外の世界を教えよう]
「外に連れ出すのはワクチン接種が終わってから」。な~んてのんきに考えていると、大事な子犬の社会化期はまもなく終わってしまいます。場所を選ばない散歩は控えたほうがいい時期ですが、外の世界は窓越しや抱っこでも見せてあげることができます。
[STEP1 まずは窓から外の景色を見せよう]
犬が家になじんできた飼い始め1週間後くらいから、窓越しに外の世界を教えます。
<手始めは、飼い主さんといっしょに窓越しの風景を眺めます>
外の世界は刺激も強いので、まずは安心な家の中から窓を通して外の景色を見せましょう。時折フードを食べさせながら見せると、犬のリラックス度が分かります。フードを食べられなかったら緊張している証なので、窓から1歩後ろに下がるなど、見せ方を変えてみて(STEP2、3も同様に)。
[STEP2 抱いたまま外の物に触れよう]
飼い始めて2週間ほど経ったら、愛犬を抱っこしたまま積極的に近所に出かけ、いろいろな物を目に触れさせて。
<フードをあげながら、物の前で数分立ち止まって見せます>
子犬にとっては、新しく目に映るすべてのものが新鮮。店先でひるがえるのぼり、風に揺れる植物、通り過ぎる車など、刺激が弱いと思われる物から近づき、その場で立ち止まって見せてあげましょう。
[STEP3 歩かせて外の物に近づかせよう]
ワクチン接種が済んだら、散歩がてら、さらに広い世界を見せてあげましょう。
<散歩ができるようになったら、愛犬の足で物に近づいて観察させます>
散歩で公園などに出かけた際には、フードを与えながら、その場に置いてあるさまざまな物に近づかせて、じっくり観察させます(散歩の許可がおりる前でも、病原菌がいないような場所には下ろしてOK)。犬は、見たことのないものに興味を持って、ニオイを嗅いだりもするでしょう。ただし、危険な物、不衛生な物には近づかないよう注意して。
[社会的刺激に慣らす⑤]
[物体に慣らそう]
犬が警戒心を抱きそうな動く物、音の出る物などはとくに、社会化期に慣らす努力をしないと、将来的に恐怖心が芽生えることも。ここでは、犬が怖がりがちな掃除機への慣らし方を紹介します。
[動く物体掃除機の場合]
[STEP1 動かない音ナシの掃除機に慣らす]
<フードで掃除機に近づくよう誘導し、安心な物であることを教えて>
動いて音のする掃除機は、まずは「物体」と「動き」に慣らし、その次に「音」に慣らすようにします。第1段階は、動かない物体に慣らすため、置いてあるだけの掃除機の周りにフードをバラまき、犬がフード欲しさに近づくのを待ちます。掃除機が近づいても安心な物であることを認識させます。
[STEP2 動く音ナシの掃除機に慣らす]
<脅かさないようゆっくり動かします>
次に、電源を入れずに音の出ない状態の掃除機を、犬の前でゆっくり少しずつ動かします。フードを食べなかったら怖がっているので、少し離れます。
[STEP3 動かない音アリの掃除機に慣らす]
<遠い場所から徐々に慣らして>
今度は、置いた状態の掃除機に電源を入れ、音を加えます。コングなどを与え、舐め続けているようなら徐々に掃除機との距離を近づけていきます。
※事前に録音した音を聞かせるなどして、掃除機の音に慣らしておくといいでしょう。
[STEP4 動く音アリの掃除機に慣らす]
<様子を見ながら動きを大きくして>
電源を入れ、音のする状態で掃除機を動かします。フードを食べる様子を伺いながら、実際の掃除機をかけるときの大きな動作に近づけていきます。
[社会的刺激に慣らす⑥]
[いろいろな素材の上を歩けるようにしよう]
将来的に愛犬といろいろな場所に出かけようと思い描いているなら、さまざまな素材の上をストレスなく歩けるようにしておきたいもの。積極的に場を設けて、慣らしておくと安心です。
[STEP1 室内でいろいろな素材の上を歩かせよう]
<素材に上がることを戸惑っているなら、物の上にフードをバラまいて誘って>
ワクチン接種が済むまでは外を自由に歩かせることはできないので、ますは家の中で工夫を施します。サークルの1面を取り外して床に置き、その上を歩かせるのも一案。ダンボールの上や人工芝の上などを歩かせてもいいでしょう。フードで誘導して素材の上に足を向かせたら、通過しているときと、通過した後にご爽美フードをあげます。
[STEP2 外でいろいろな素材の上を歩かせよう]
<社会化期の子犬は、最初は躊躇していても、怖くないことが分かれば、サクサクと歩くように>
最終のワクチン接種が済む前でも、病原菌がいないような場所に抱いて連れていき、下ろすことはできます。外へ出れば、マンホールや排水溝の金網、段差のある石段など、未知の素材には事欠きません。やり方はSTEP1といっしょ。あえて回り道をしてその上を通るようにするなど、積極的に素材体験をさせましょう。
段差や階段などは、高低差が少ないところからトライしましょう
[社会的刺激に慣らす⑦]
[ほかの犬と触れ合おう]
犬見知りな犬に育ててしまうと、お出かけが楽しめなくなってしまいます。反対に、ほかの犬が近づくと遊ぼうとして興奮しすぎるのも問題……。犬同士のコミュニケーションが上手になるよう、社会化期に好ましい触れ合いをさせましょう。
[STEP1 抱いたままほかの犬を見せよう]
<フードを与えながら、怖がらない距離までほかの犬に近づけて>
ワクチン接種が済むまでは、抱っこをしてほかの犬を見せるようにします。散歩中のほかの犬に出合うのを持ってもいいですし、ドッグランのフェンスの外からいろいろな犬同士のアイコンタクトタイムを。食べないときは、無理強いは禁物。
[STEP2 散歩中に出合ったほかの犬と交流させよう]
<体格に大きな差のない犬と、積極的に触れ合いタイムを設けて>
ワクチン接種が済んで散歩に出かけられるようになったら、すれ違う犬とは積極的に交流させて。ただし、凶暴な犬、興奮している犬は危険なので離れましょう。最初のうちは、体格に大きな差のない小型犬と接するのが安心。お互いのニオイを嗅ぎ合いっこしたりして、犬特有のコミュニケーションを取らせます。
[子犬同士の触れ合いの場パピーパーティーに参加しても]
1回目のワクチン接種後、2、3回目の接種が済む前でも、子犬同士が触れ合える場があります。事前に健康診断をして、感染症のキャリアでないことが分かった子犬を集めてパピーパーティーを用いている動物病院やしつけ教室などもあるので、参加するのもオススメです。
[体のお手入れに慣らす①]
[マズルをつかむ]
<こんなお手入れに役立つ!>
口周りのブラッシング
歯を磨く
耳の汚れを取り除く
目ヤニを拭き取る
<指にフードを塗り、マズルがすっぽり入るような筒形を作ります>
マズルとは、犬の鼻先から鼻のつけ根までの前に突き出した部分で、そこを抵抗なくつかめるようになると、さまざまな犬のケアに役立ちます。マズルをつかむ練習として、指の端にフード(チーズなど)を塗り、4本指を丸めて筒形を作ります。フードは、犬から見て一番奥になる指(小指)に塗って。
<フードを舐めるため手の筒にマズルを突っ込んだら、そっとつかんで>
筒状を崩さないまま正面から犬の鼻先に近づけて、指にフードが塗ってあることを知らせたら、フード舐めたさに犬が手の筒の中にマズルを突っ込むのを待ちます。フードを舐め始めたら、優しくマズルを握ります。マズルをつかまれることに慣れてきたら、フードを塗らない手でマズルをつかみ、直後にご褒美フードをあげるようにします。
[これはNG]
[マズルをつかんで力づくでコントロール]
しつけ本の中には、「よい叱り方」として「マズルをギュッとつかむ方法」を紹介しているものもありますが、それがきっかけで、飼い主さんに本気で噛みつくようになった犬もいます。服従関係ではなく信頼関係を築きたい飼い犬に対しては、やらないほうがいいでしょう。
[体のお手入れに慣らす②]
[足や体を拭くことに慣らす]
<こんなお手入れに役立つ!>
タオルドライ
散歩後の足拭き
<拭きやすいよう、立った姿勢をキープさせるため、コングを口の高さに固定>
まずは足や体を触られることに慣らしてから、このトレーニングを始めましょう。犬を立ったままの姿勢でジッとさせるため、犬の口の高さにコングを固定します。クレートの扉やサークルの一面などを利用して、コングのフードを塗ったほうを外側に向けて取り付けます。手頃な取り付け場所がなければ、両膝の間に挟んでも。
<フードの入ったコングに夢中になっている間に足と体を拭く練習を>
拭くタオルが大きいとじゃれつきやすいので、小さなハンドタオルなどから慣らすのがオススメです。犬がコングに夢中になって舐めたりかじったりしている間に、片足ずつ持ち上げ、乾いたタオル(実際のお手入れのときは濡れタオルを使用)で足から足裏まで優しく拭きます。続けて体にもタオルをあて、さするように拭いてあげて。
[体のお手入れに慣らす③]
[ブラシでなでる]
<こんなお手入れに役立つ!>
ブラッシング
<まずは尖っていない背をあてて動かし、ブラッシングのマネごとから慣らします>
先の尖ったブラシをいきなり体にあてると、怖がる犬もいます。ここではブラシを使用していますが、コームで行っても構いません。両膝の間にフードを塗ったコングを挟み、犬を釘づけにさせてから、まずは尖っていないブラシ(コーム)の背のほうを犬の体にあて、優しくなでるように動かします。
<簡略なブラッシングにトライ。だましながらでも続けるのがコツ>
ブラシ(コーム)の背でなでられることに慣れたら、本来のブラシの使い方で被毛を軽くとかします。ブラシを気にして顔を上げたら、知らんぷりをしてブラシも隠して。再びコングのほうを向いたら、ブラッシングを再開。だましだまし慣らしていきましょう。
[アドバイス]
[ブラシを怖がる場合、最初は見せるだけでOK]
飼い主さんがブラシを持っただけで怖がる場合は、ブラシを犬のそばに置いて、その周りにフードをバラまき、物体に近づくことに慣らすところから始めて。それができたら、「ブラシを手に取って犬に見せてはフードをあげる」を繰り返しましょう。
[体のお手入れに慣らす④]
[口の中に指を入れる]
<こんなお手入れに役立つ!>
歯を磨く
<フードつきのおいしい指を舐めさせてから、その指を口の中へ>
犬の健康を守るために、歯周病予防のハミガキは欠かせません。でも、口の中にいきなりハブラシを突っ込むのは抵抗がおいしい指を入れることで慣らしていきます。人差し指にペースト状のフード(チーズなど)を塗り、まずはそれを舐めさせます。おいしいものを口に入れてくれるんだと思わせたらしめたもの。口の際から人差し指を入れます。
[応用編]
[口を開けさせてフードを与える]
<こんなときに役立つ!>
薬を飲ませたいとき
口に含んだ物を確認したいとき
<フードに引きつけている隙に口を開けさせ、すぐにフードをあげて>
1粒のフードを、犬に舐めさせます。犬の気がフードに移っている際に、反対の手でマズルをつかみ、人差し指と親指で犬歯の後ろを握って(こうすると噛まれない)上あごを引き上げます。口が開いたらすぐにフードを入れ、手を放して食べさせて。「口を開けたらいいことが起きた」と思わせることが大事です。いざというときに、口を開けさせてくれる犬にしつけましょう。