【成功するしつけの原則は実にシンプル。しつけは難しくないのです。】トイプードル・ティーカッププードルのブリーダー【ポッシュ】

【しつけに必要な3つの原則】

言葉が分からない犬のしつけって大変そう……。そんな漠然とした不安は今すぐ捨て去って。しつけ成功に必要な知識はたったの3つでいいんです。これさえ理解してトレーニングを実践すれば、きっと望みどおりの愛犬に育てられますよ。

[原則1 犬は体験したことを学習する]

<犬に言葉は通じません。学ばせたいことは体験で覚えさせます>

犬の脳は人間の脳と違うので、言葉を合図として理解することはあっても、内容まで理解することはできません。だから、行動の善悪を必死に言葉で説明しても、それは無意味などころか、分からないことを何度も言われる犬の身になったらストレスでしかありません。また犬は、時間や数といった概念も持たないので、1時間前のことを持ち出されても、キョトンとするばかり。

そんな犬に、いろいろなことを教えたいならばどうすればいいのでしょう。学ばせたいことは、繰り返し体験させて脳に回路を作るのです。

反対に学ばせたくないことは、体験させないようにして、脳に回路を作らないようにします。

言葉を持たない犬は、「体験からしか学べない」ということを心得ておきましょう。

[原則2 犬の学習パターンは4つ]

Ⓐ犬は結果的に「いいこと」が起きた行動の頻度を高める

Ⓑ犬は結果的に「嫌なこと」が起きた行動の頻度を減らす

Ⓒ犬は結果的に「いいこと」がなくなった行動の頻度を減らす

Ⓓ犬は結果的に「嫌なこと」がなくなった行動の頻度を高める

いいこと 嫌なこと
起きる ある行動の頻度は 増やすⒶ ある行動の頻度は 減るⒷ
なくなる(起きない) ある行動の頻度は 減るⒸ ある行動の頻度は 増やすⒹ

【ABCDの学習パターンをしつけに活用するには…】

[好ましい行動の頻度を高めたいときは]

or

で学習

<飼い主さんが嫌な行動を起こす存在と思わせないことも大事!>

たとえば、好ましい行動の「スワレ」を教えたいと思ったら、大が「スワレ」の姿勢をとったときにいいことを起こす(A)か、嫌なことをなくす(D)方法が考えられます。でもDの場合は、あらかじめ犬を嫌な状況に追い込む必要があり、飼い主さんに嫌なことをされたと勘違いされかねません。なのでAがもっとも望ましい学習パターンと言えます。

<社会化は、「結果的にいいことが起きた」から学習するAのパターンで>

犬を人間社会の刺激に慣らすということは、その刺激に接した後には必ず「いいこと」が起きる、と犬に覚えさせることです。犬にとっての「いいこと」の代表は、フードをもらったり飼い主さんになでてもらったりすること。社会化トレーニングは、Aの学習パターンを基本にして進めていくとスムーズです。

[好ましくない行動の頻度を減らしたいときは]

or

で学習

<「嫌なこと」の効果的な起こし方が難しいので、極力Bは使わない>

たとえば、好ましくない行動の「要求吠え」をやめさせたいと思ったら、大が「要求吠え」をしたときに嫌なことを起こす(B)か、いいことをなくす(C)方法が考えられます。Bの場合は、飼い主さんが嫌なことを起こすやり方がとても重要。嫌なことは「適切な強さ」で「必ず起こす」「即座に起こす」ことが不可欠になりますが、多くのケースでこの条件を満たすことができません。

<「結果的にいいことがなくなった」から問題行動をやめるCのパターンが理想>

たとえ上の3条件が揃っていたとしても、飼い主さんに嫌なことをされた犬は、「飼い主を避けるようになる」「攻撃性を高める」「無気力になる」などのマイナス行動をとることも……。そうなっては逆効果なので、「いいことを起こさない(無視するなど)」Cのパターンで改善するのが賢明です。

[原則3 犬は前ぶれを理解する]

<「スワレ」などの合図は、「行動→いい結果」の前ぶれとして教えて>

犬は、飼い主さんの発する言葉の意味は理解できませんが、頻繁に使われる特定の短い言葉(合図)を「音声シグナル」として理解することはできるようになります。

具体例を挙げると、「イイコ」と声をかけてからフードをあげることを繰り返していると、犬は「イイコ」という音声シグナルを耳にしたとたんにフードがもらえると理解し、喜ぶようになります。

つまり大は、音声シグナルを物事の「前ぶれ」として認識できるということです。

これに行動が結びつくと、学習心理学でいう「三項随伴性」が成立します。前ぶれ(音声シグナル)が先行刺激となって、犬に行動を起こさせ、その結果、犬にいいことが起きる(嫌なことがなくなる)という一連の流れが、犬をしつける上ではとても重要。

この流れを繰り返し体験させていくと、犬は合図1つで、いい結果が伴う行動を起こすように学習していきます。

<三項随伴性の流れ>

[前ぶれ(先行刺激) → 行動 → 結果※]

※いいことが起きたり、嫌なことがなくなったりする。