【まず犬をよく理解しよう】トイプードル・ティーカッププードルのブリーダー【ポッシュ】
【人間との違いを知り、賢いしつけを】
[犬と人間は違うから言葉で教えようとしてはダメ!]
<犬と人間の違いは?>
犬の脳の構造は人間と同じだが、大脳新皮質の量が全然違う。人間は大脳新皮質の量が多いため、抽象的な概念を理解し、言葉を使ってコミュニケーションができるが、犬はそうではないのだ。だから「言葉でしつけをするのはムリ」と心に刻もう。
<行動・動作を教えることはできる>
人間からの働きかけによって行動したり、その行動を覚えることはできる。たとえば、ある行動をしたらごほうびをあげる、これを何度も繰り返していると、行動を覚える。だから、言葉がわからなくてもトイレトレーニングはできるし、「スワレ」「フセ」などの動作を覚えさせることができる。
しつけと聞くと、何か堅苦しく、厳しいもののように感じるかもしれません。あるいは、「しつけ=叱ること」というイメージもあるかもしれません。
でも、しつけは犬を抑えつけるものでも、叱りつけるものでもありません。これらは、犬に不要な恐怖心を植え付けるだけです。
また、言葉で叱るのはほとんど意味のないことです。なぜなら、犬は言葉を理解できず、反省をすることもないからです。
ではどうするかですが、犬の能力や行動を理解したうえで、それに合ったしつけをすべきです。実際のしつけやトレーニングを始める前に、ぜひ犬のことを理解しましょう。それこそが、犬と一緒に暮らすための第一歩です。
[知っておきたいこと①]
[「悪いこと」を体験させない]
[「よいこと」はどんどん体験させる]
<いくら叱っても意味はない。>
<だって、子犬は言葉がわからないから>
犬がゴミ箱を倒して中身をあさる、気づいた飼い主が叱る…、よくある光景だが、叱ったところで意味はない。とりあえずはビックリしてやめるかもしれないが、「叱られたから、もう二度としないゾ」というように犬が反省することはない。なぜなら、犬は言葉がわからないので、なぜ叱られているのか理解できないから。また、「楽しい」とか「楽しくない」というような、自己中心的な感情はあるが、相手の気持ちを思いやって「わかった。もうやらない」というような複雑な考え方はしないのだ。
<では、どうするか。>
<叱るようなことは体験させないこと>
犬にやってほしくないことは、体験させないこと。つまり、この例でいえば、ゴミ箱をそのへんに置いておかないことがだいじ。一度体験して、「楽しい!」と覚えてしまうと、いくら叱っても効果はなく、何度でも同じことを繰り返すことになるからだ。
逆にいえば、体験したことしか覚えないので、犬に覚えてほしいことはどんどん体験させよう。これがしつけの第一原則。
<どんどん体験させ、覚えさせたい!>
トイレシートの上でオシッコ、ウンチをする
フードや犬用のおやつだけを食べる
来客中はクレートやサークルの中でおとなしくしている
<覚えないように、体験させない!>
トイレシート以外のところでオシッコ、ウンチをする
味のついた人間の食べ物を食べる
来客に吠えかかる、飛びつく
[知っておきたいこと②]
[犬の学習パターンは4つ。]
[これを覚えて接するとうまくいく]
<子犬の学習パターンをしつけに応用する>
言葉がわからない子犬をしつけるときに、覚えておきたいのが「犬の学習パターン」。犬は、自分にとって「いいこと」「いやなこと」は感じるので、それを基準にして行動を覚えたり、あるいはその行動をしなくなったりする。その学習パターンは次の4つ。これを理解していると、合理的にしつけができる。
<犬の学習パターン>
いいこと いやなこと
起きる Ⓐある行動の頻度は高まる Ⓑある行動の頻度は減る
なくなる Ⓒある行動の頻度は減る Ⓓある行動の頻度は高まる
[Ⓐ「いいこと」が起きるので、またやります!]
例
トイレシートの上でオシッコ
ほめられる
「いいこと」が起きる
またやる!
<「ほめて育てる」は、しつけの王道>
この学習パターンを利用するとしつけがしやすい。「よい行いをする中→ほめられる→またやる」ということを繰り返すと、よい行いが定着する。トイレトレーニングや、「スワレ」「オイデ」などのトレーニングは、この方法を貫くことが成功のカギになる。
[Ⓑ「いやなこと」が起きるので、もうやりません!]
例
いたずら防止剤を塗った家具をかじる
にがい
「いやなこと」が起きる
もう、かまない!
<「罰」を下して行動を正す>
「罰」によって悪い行いをやらないようにもっていく。ただし、前の条件は、「適切な強さ」「必ず起きる」「1秒以内に起きる」の3つ。この3つのうちひとつでも欠けていると効果は期待できない。いたずら防止剤はよい方法だが、ときに効かない犬もいる。
[Ⓒ「いいこと」が起きないから、(なくなる)もうやりません!]
例
人間の食べ物をほしがる
飼い主は犬を無視
「いいこと」が起きない
つまらないからやらない!
<犬の要求をシャットアウト>
吠えたり、飛びついたりして要求したときに、それに従ってしまうと、吠えたり、飛びつけば「いいこと」が起きると覚えてしまう。逆に、吠えようが、飛びつこうが、無視していれば、「いいこと」が起きないので、やがてやらなくなる。
[Ⓓ「いやなこと」がなくなるので、またやります!]
例
ブラッシングがいやなので、飼い主の手をかむ
飼い主がブラッシングをやめる
「いやなこと」がなくなる
またかんじゃえ!
<手に負えない犬にしてしまう最悪パターン>
かんだり、吠えたりしたら、相手がひるんで「いやなこと」をやめた。このようなことを体験すると、「かんだり、吠えたりすればOK!」ということを学んでしまう。こうならないように、ブラッシングなどの必要なケアに少しずつ慣らすことがだいじ。
[知っておきたいこと③]
[犬は「前ぶれ」を感じとるのが得意。]
[だから言葉や手の動きを覚える]
<たとえば、犬はよくこういう行動をとる>
●食器の音がしたり、フードの袋を飼い主が手にしたとたん、犬が飛んでくる
●飼い主がリードを持ったとたん、犬が飛んでくる。
<これらの行動は、犬が「前ぶれ」を感じるので起こる>
<前ぶれ>
●食器の音がする
●フードの袋を飼い主が手にする
●飼い主がリードを持つ
<行動>
●食事がもらえる!
●散歩に行ける!
<「前ぶれ」で行動する犬。これをしつけに利用する。>
上にある「食器の音がしたり、フードの袋を飼い主が手にする」「飼い主がリードを持つ」ということは、犬にとって「食事」や「散歩」の前ぶれだ。つまり、毎日同じことを繰り返すうちに、犬は前ぶれを感じとるようになり、それだけで次の行動(飼い主のもとへ飛んでいく)をとるようになる。
これを応用すると、なんらかの合図(シグナル)によってある動作・行動を犬にとらせることも可能になる。たとえば、「スワレ」を指示するとき、手の動き(ハンドシグナル)や「スワレ」という言葉(音声シグナル)によって、犬を座らせることができるようになる。
犬には言葉は通じないので、言葉でしつけることはできない。でも、「合図としての言葉」を教えることはできるのだ。